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mapping the pathway

医療技術評価(HTA)は世界中の市場にアクセスするために不可欠となっており、日本も例外ではありません。HTAは、新たな健康療法やテクノロジーが有する絶対的な利点やコストを決定するために医療エコシステム全体の複数の要因を考慮に入れるものであり、規制当局の承認とは異なるものです。これは、バイオ医薬品企業が、薬剤評価において絶えず変化していく環境と対峙していることを意味しています。

これらの評価における成功の鍵となる要素は、日本の厚生労働省やあらゆるHTAグループに、安全性、有効性、そして付加価値についての現実的な根拠を示す、製造販売後臨床試験を含む患者中心のデータを提供することにあります。厚生労働省は特に、患者の状況、医学的状態、性別、およびその他の主要な特徴を前提として、誰が治療の恩恵を受けるのか、またどのようにこの治療が患者に影響を及ぼすのかを主に示すデータを見たいと考えています。このようなデータは、特に治験依頼者が比較的高い治療費を求めている場合でも、HTAを提出することで還付のサポートを証明することができます。

しかし、大半のHTA提出データは非介入(観察)試験から得られるものであり、日本を含む多くの国で必要な全てのデータが得られる単一のデータベースがないことが課題となっています。あるいはデータベースが存在している場合でも、外来診療の利用に関する情報はあるが、入院やその他の高額な診療についての情報がない等、不完全で一部の情報しか提供されていない場合がほとんどです。最も望ましい状況下でも、一連の診療内容を追跡するためのデータベースをリンクすることは困難です。このため、本来価値のあるべきところにギャップが生まれ、HTAを弱めているのです。

製薬会社も定期的なHTAのレビューにかかる時間とコストの問題に直面しており、このレビューには通常で3年/回を要します。治験依頼者がこのデータを収集し、まとめるための有効な方法を特定できない場合は、また次のHTAレビューの準備でデータを集めなければならないという状態が続くことが多く、その度に高額な費用がかかってしまうのです!

バイオ医薬品企業は、関心のある疾患を有する患者の生活レジストリ(継続試験)を作成することで、このプロセスをより有効なものにすることができます。

患者レジストリは、特定の治験目的のために、統一された臨床、支払い、およびその他の関連データを収集するための観察試験法を用いる系統的なシステムです。レジストリに登録すると、臨床医や患者が全ての治療や疾患の治癒や進行の主要指標について報告することができます。さらに、自分で衣類を着脱できるか、十分働ける状態にあるか、といった日常生活の活動を行う能力等、生活の質に関する情報も提供することができます。また、治療の利点を損なう可能性のあるその他のリスク因子に関する情報も提供することができ、勿論これらは治療の利点を明らかにする際に理解しておくべき重要な因子です。

レジストリ基盤を作りデータ収集を維持することで、治験依頼者は標準治療や特定の他社製品と彼らの提供する治療を比較し基準に従って評価するのに使用可能な、安定した一連のデータの作成することができます。また、特に大きな利益とコスト削減を示すサブグループも特定でき、利益が認められないグループも特定することが可能です。このアプローチにより、治験依頼者は、毎回の新たなHTA提出で最初からこのデータ収集プロセスに着手するよりも、より短期間及び低コストでこれらに対する回答を提供することができるのです。

以下が、レジストリがHTA提出に役に立つ6つの事由です。
1. コスト削減:
試験の設定−あらゆる試験は、患者レジストリを含め臨床試験に関連して最もコストがかかる部分です。一旦設定して開始されれば、後はその維持と定期的な探索的解析を行うだけです。

2. 時間の節約:
生活レジストリを構築することで、バイオ医薬品企業は新規データ及びよりしっかりとした根拠のあるデータの作成のために同じリソースを繰り返し選ぶことで規模の経済を活用することが可能となります。これがない状態では、企業は次のHTAのレビューに対応するため、新たな研究試験の準備に果てしない時間を費やすことになります。

3. 遅れて得られる利益とリスクの特定:
レジストリを継続して使用することで、バイオ医薬品企業は患者の長期転帰を追跡することが可能となり、治療から得られる長期にわたる利益についての主張を検証し、重要と考えられるリスクを特定するために使用することが出来ます。これは、即時の利益を示すことのできない、あるいは長期にわたる副作用の懸念がある一部の治療介入にとっては特に重要です。

4. 情報格差を埋める:
複数の直結していないデータベースから種々異なるデータを集めるよりも、レジストリを使用することで一つにまとめられた情報を得ることができ、これによりデータにおけるギャップのリスクを軽減し患者の経験をより総体的に示すことができます。

5. 比較に対応:
HTAでは、様々な治療法を、既に市場で提供されている治療法及び最も懸念されている問題と比較します。これらの問題や競合している治療法は経時的に変化しているため、次回の提出に必要なデータを知ることが困難になります。継続的なレジストリでは複数の要因や指標に関するデータを収集します。これは研究者が彼らの意見を主張するための頑健なデータを収集できることを意味しています。

6. その他の研究をサポート:
レジストリは探索的試験をサポートするため、豊富なデータを提供し、将来行われる試験の実施を助ける早期段階での臨床的な質問に回答することや、(非)盲検延長試験においてもアイデア(例、異なる年齢群や腫瘍学で遭遇することの多いその他の治療との併用等)を提供することも可能です。

治療において継続的なHTAの評価が必要な場合、継続的な患者レジストリの利用によって、確実に時間とコストを節約し、同時にデータの品質を改善し、情報の格差を縮めることができます。いったんインフラができてしまえば、あとはレジストリを維持しつつ、新規データ要件の調整、また、必要に応じてデータマイニングを行うことができます。

Topics in this blog post: Market Access, HTA, Registries
About The Author

Global Chief of Scientific Affairs and Senior Vice President, Real-World & Late Phase Research